スポーツと眼に関して Ⅴ スポーツと視力
平成27年1月26日 東洋経済新聞より 抜粋・
無名のメガネ捕手、古田が殿堂に入ったワケ
「メガネ男はプロじゃ無理」覆した反骨心
プロ入り当時の視力は「裸眼0.1くらいかな。(視力検査表の)一番上が見えるかどうかだったから」。おまけに乱視がきつかった。「当時乱視のソフトレンズがなくて、矯正するにはメガネしかなかった」。矯正視力は1.2あったという。メガネをかけるようになったのは大学に入ってから、兵庫県の川西明峰高校時代は視力が0.5ぐらいあって裸眼でプレーしていたが、「受験勉強で一気に悪くなった」という。一般入試で立命館大学経済学部に合格。その代償として視力が低下した。タテの規律が厳しい体育会。キャンパス内で先輩に合えば、大きい声であいさつなければならない。「見えませんでした、気が付きませんでしたじゃすまされないんで、もうメガネをかけるしかないと・・・」。こうしてメガネの捕手が誕生したのである。メガネのせいで「無視」されたドラフト・・・
2015年 1月26日 東洋経済新聞より・・・こちらへ
<スポーツと目>
■スポーツにおける視力不足のハンディ・・・こちらへ
■スポーツ選手の視力矯正・・・こちらへ
■メガネかコンタクトか・・・こちらへ
■度付きスポーツサングラス・・・こちらへ
■度入りスポーツメガネ・・・こちらへ
動体視力のトレーニング
スポーツと眼に関して Ⅴ スポーツと視力 で記したように、わが国の動体視力の研究の経緯は、主としてドライバーの交通視覚の分野が主であったため、これをスポーツに応用した研究は少ない。山田はスポーツと動体視力の関係について多くの研究を行っている。そのなかでスポーツ選手は動体視力がすぐれており、また動体視力はトレーニングによって向上するとしている。山田の実験は次のようである。大学生のスポーツ選手(ボールゲーム)と、日常、スポーツをしていない大学生、各々10名を選んで21日間連続して、動体視力(KVA)の主因と考えられる調節能力をトレーニングしたものである。トレーニングは、accommodo-polyrecorder という装置を使って、5mの距離のところと、その人の近点に視標を交互に提示し、これにすばやく眼の焦点を合わせることをくり返すものである。近点に提示された視標を明視できるまでの時間(これを調節緊張時間という)が短縮すればトレーニング効果があったと判定するものである。
その結果、日頃スポーツをしていない大学生調節緊張時間は急速に短縮し(トレーニング効果があった)、21日間のトレーニングの終わりごろにはスポーツ選手とほぼ同じになり、しかもこの時間が短縮するとともに動体視力も急速に向上したのである。一方、スポーツ選手もこのトレーニングによって調節緊張時間も短縮し、それに応じて動体視力も向上したが、スポーツをしていない人にくらべてその効果はわずかであった。
つまり、動体視力は調節能力のトレーニングによって向上すること、そして、それは日頃スポーツをしていない人に顕著であるということである。パイロットや白バイ隊員のように、直進してくるものを明視することになる人の動体視力は、一般人にくらべてよいといわれる。動体視力のいいひとがこれらの食につくわけではないだろうから、日常の業務がいつのまにか動体視力のトレーニングになっているとみるのが妥当だろう。したがって、スポーツ選手の動体視力がいいのも、日頃、動くボールを追跡したり、明視したりすることを繰り返すことが、おのずと動体視力のトレーニングになっているからではないかと思われる。この実験を通して、スポーツ選手の動体視力の向上がほとんどなかったことは、すでにある域にまで達している場合には、動体視力の向上は少ないことを示唆しているようである。