視機能は子どもの運動能力&学業にも影響が・・・
■子どもの遠視が学業に与える影響のことが紹介されていました。
今から50年ほど前、ジュン・F・ケネディ氏が合衆国大統領のときのことです。副大統領のリンドン・ジョンソン氏(後に第36代大統領)の次女、ルシー・ジョンソンさん(当時高校生)は学校で落第生になりかけていたのです。アメリカの副大統領のお嬢さんといえばエリート中のエリート。しかし、ルシーさんは、彼女は知能が低いわけでもなく、学習態度も問題がないのに、どんなに頑張っても成績が思わしくありませんでした。
「家族は皆優秀でしたが、私だけは成績不良で、どんなに頑張ってもCからC+にすることさえできませんでした。家で何時間もかけて書いた作文でも「ルシー、自分の間違えているところがわからないの?」と先生に言われてしまうのです。自分がどう間違っているのが私には全くわかっていなかったのです。
ルシーさんの側近たちは、さまざまな検査を繰り返して原因究明に努めましたが、満足な答えは得られませんでした。そして、最後に受けたのが眼の検査だったのです。何故眼の検査が最後になったかといえば、ルシーさんには1.2の視力があったからです。
しかしオプトメトリストのドクター・ボブ・クラスキン氏の検査の結果、なんと彼女には見た物や読んだものの情報を認識する部分の問題や、また、ふたつの目を同時に使ったときのバランスが悪く、見たものの意味を理解する能力に欠けていたことがわかりました。さらに、目の使い方が悪いために、からだ全体のバランス感覚に乏しく、動きが非常にぎこちなかった のです。
幸いなことに、ルシーさんはドクター・クラスキンのもとで「ビジョントレーイング」に励むこととなり、その結果、数か月もすると彼女の成績は次第に上がっていきました。また、ルシーさんの生活全般がこのトレーニングで大きく変わっていったのです。
「私の成績はだんだん良くなり、1年半後には平均がDからBへとなりました。そして大学に入った年には、なんと学長の優秀者名簿に名を連ねるまでにもなったのです。また、私のからだのぎこちなさも消えました。もちろん、スポーツ選手になれるほどの技量はありませんでしたが、昔の自分とはくらべものになりませんでした。」
ルシーさんは、その後結婚し子どもに恵まれ、こういった目の問題の早期発見の重要性を訴えるために、各地で講演活動に励んだのです。「視力だけでは子どもの目の隠れた問題は見つからない。赤ちゃんのときから、すでに目の機能の発達に留意することの重要性を知って欲しい」と説きました。
<ビジョントレーニング 内藤貴雄著より>
■オプトメトリストって何?
「オプトメトリスト」とは、日本ではまだ公的には認められていない職種であり、視覚です。しかし海外(アメリカ、カナダ、オーストラリア、そしてヨーロッぱやアフリカ、アジアのいくつか)の国々ではすでに高度の専門職。特にアメリカでは100年以上もの歴史があり、通常の4年制大学卒業後にオプトメトリーの大学に入学するのが一般的で、4年学び卒業した後「ドクター・オブ・オプトメトリーの称号を得ます。国家試験と州の試験に合格してから開業できます。
「目の健康」に最も重きを置く眼科医に対して、オプトメトリストは健康であること以上に、「目を上手に使って効率よく見えているか?」「見るべきものを正確に脳で見ているか?」など「ビジョン全体が健全であるか」といったことに着目します。
視力も良く、病気という点で問題なしとした目であっても、例えば「ふたつの目が一緒にうまく機能していない」などの問題により、生活の中のさまざまな場面でミスが発生したり、実力はあるのにスポーツでよい成績を挙げられない、などといううことが起こったりします。また、知能は低くないにもかかわらず、学業で非常に苦労することもあります。
そういった目があれば、それを改善しより良く機能できるようにしていくのがオプトメトリストの重要な仕事です。単に視力だけでなく、目と思考や知能との関係まで掘り下げ、ビジョン全般のプロセスに取り組みます。これが「ビジョンセラビー」あるいは「ビジョントレーニング」と呼ばれる手法です。薬や手術といった手法を用いず、自然な回復を企てます。子どもから大人、スポーツ選手まで、学ぶ力、仕事力、競技力向上のために「見る力」をアップするのです。
■目が悪くて、普段眼鏡を掛けている方に安全なスポーツを楽しんで頂くために
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■眼球の機動力・・・簡単なトレーニング
視力は、本来眼球がもっている「機動力」をフルに使うことによって、はじめてその’力’を十分に発揮できます。しかし、この「機動力」に問題があれば、ハッキリ見えているものも、ときにピント外れになってしまうばかりか、見えていても正しく理解できないことさえあるのです。
本や教科書、プリントの文字を読む、黒板の文字を書き写すなど、学校で子どもはたくさんの情報に視線を走らせます。これらの作業のには次のような目の「機動力」が求められます。
1.見たいものをしっかり追いかける(眼球の運動コントロール)
2.バックグラウンドからハッキリ際だたせる(焦点合わせ機能)
3.ふたつの目を連動させ立体的に正しく距離を捕える(両眼のチームワーク)
これら3つはいわば「三点セット」で、私たちが目を使うときの最もk異本的な両眼の「機動力」であり、オプトメトリストは「基礎両眼視機能」と呼んでいます。
「基礎両眼視機能」での眼球機動サイクルは、reach、grasp、hold、releaseと表現されます。
reachー届かせます
graspー捕まえます
holdーキープする
releaseー放つ
Reach、まず何はともあれ目標に視線を運ばなくてはありません。空間内のどこに目標があるのかを正確にとらえ、視線をreach〜「届かせます」。次はgrasp。目標を包囲し、「捕まえます」。ピントをしっかり合わせながら両眼の視線を目標にロックオンするわけです。続いてそれを「キープする」hold。両眼でバランス良く、鮮明にピント合わせを維持しながらキープします。そして次の目標へと視線が映る寸前に、現在の目標を「放つ」〜releaseです。そして次に視線を運ぶ目標でも、再び同じサイクルreach、grasp、hold、releaseが始まるのです。