スポーツと眼に関して Ⅶ スポーツと視力
動体視力には2種類ある
スポーツ選手はDVA(動体視力)も優れている。動体視力には、DVAおよびKVAがある。
上部イラスト向かって左側がKVA(Kinetic Visual acuity)前方から自分のほうに向かってくる目標を見る時の動体視力、右側がDVA(dynamic visual acuity)眼の前を横に動く目標を見る時の動体視力です。今回のページ投稿はDVAに関してです。
ただし、現在においてDVAを測定できる機械がありません。
アメリカのスポーツビジョン研究者ルース氏の研究結果において、大学の野球選手18名と、非スポーツ選手25名のDVAを比較したところ、有意にスポーツ選手がすぐれていたというのである。
彼らはスポーツ選手のDVAがすぐれている理由について、素質的にスポーツ選手が能力が高い、あるいは練習をくり返すことによるトレーニング効果、という2つを考えているが、先のKVAのトレーニング効果からするとDVAも日頃のスポーツによる練習効果とみるのが妥当ではなかろうか。先に、KVAの動体視力は速度が速いほど低下も大きい、としたが、DVAの視力も対象の速度が速いほど低下する。低下の度合について、メスリングらの実験によれば、静止視力が約1.3であれば視標が動くときには1.0になり、横の見る範囲が広くなり速度が速くなればなるほど、視力は低下する。
以前、「スポーツ選手の目」をとりあげたテレビ番組のなかで、スポーツ選手のDVAに関しておもしろい実験をおこなっていた。新幹線のホームに立ったアイスホッケー日本リーウのゴールキーパーの選手に、眼の前を通過する列車の窓にはられた文字が読めるか、というものであった。この人には、たんに窓に文字が1つ書かれていることだけ知らされ、何両めか、文字は何であるかなどはいっさい知らされていない。にもかかわらず、このキーパーは目の前を時速300Kmで疾走する文字が見事に読めたのである。バックが激しく行き来し、これを的確に追跡することを繰り返しているキーパーにとっては、時速200Km(秒速55m)で動くものも難なく判読できるのである。文字の判読は網膜中心窩にとどめなければできない。文字らしきものが視野内に飛び込んで来たら、ただちにそれに正確に眼が跳んで、スムーズな眼球運動(おそらく、頭も一緒に動いている)で、文字を中心窩にとらえながら一瞬のうちに判読する。このような選手は、中心窩から文字をはずさないように「眼球運動+頭」を動かすことが非常にすぐれているのではないかと考えられる。