野球とサングラス紫外線による視力低下を防ぐため、サングラスをして練習する伊万里高野球部捕手の梶山勇人さん=伊万里市の同校グラウンド

梶山勇人さんは、日没後はサングラスを外して練習する=伊万里高校グラウンド

「21世紀枠」で春夏を通じて初の甲子園出場を果たす伊万里高校野球部。その中に一人、サングラスをかけた部員がいる。4番で捕手の梶山勇人さん(17)。小学3年で発症した「翼状片(よくじょうへん)」と呼ばれる目の病気の進行を防ぐには、屋外でサングラスが欠かせない。見た目で「格好をつけている」と誤解されることが多いが、「病気のことを広く知ってもらうきっかけになれば」と前向きにプレーに打ち込んでいる。

梶山さんは小学2年で野球を始めた。啓成中学校時代は主将として、現在の伊万里高野球部主将の犬塚晃海さん(17)とバッテリーを組み、佐賀県大会で優勝した。高校では、昨秋の県大会で打率4割の活躍で準優勝に貢献。67年ぶりの九州大会出場を果たし、甲子園への切符も手にした。

翼状片を発症したのは小学3年のとき。「黒目が一部、へこんだように見える」と母親が異変に気づき、病院で診断を受けた。

翼状片は結膜の病気の一種。白目の表面を覆う半透明の膜が、目頭の方から黒目に向かって翼のように三角状に伸びてくる症状からその名がある。紫外線や小さなほこりが目に入ると悪化する。視力が低下したり、放置すると失明したりする恐れもあり、症状によっては手術が必要になる。

発症時は深刻さを理解できなかった。そのまま1年を過ごしたが、日差しを浴びる時間が長いと、目に違和感を覚えた。5年生のとき母親に説得され、進行を防ぐためにサングラスをかけるようになった。

恥ずかしくて、周りの目が気になった。「調子に乗っている」と言われたこともあった。

中学1年の時、病気のことをインターネットで調べて「付き合っていくしかない」と受け止めた。「理解したことで開き直ることができた」と振り返る。

発症から8年。症状の進行はなく、視力は2.0を保っている。学校生活で窓際の席になると、替えてもらうときはあるが、野球のプレーには支障はない。

「両親のおかげ」と梶山さんは話す。サングラスを勧めてくれた母親と、所属していた少年野球チームの全員に梶山さんがいないところで病気の事実を打ち明け、支える雰囲気をつくってくれた父親に、改めて感謝の気持ちを口にする。

3月23日に開幕する選抜大会は、家族をはじめ、これまで支えてくれた人たちへの恩返しの機会でもある。「4番の仕事を果たしたい」。活躍を誓う瞳は輝いていた。