スポーツに欠かせない視機能トレーニング №1
スポーツに必要な見る能力の種類
=スポーツビジョン
視機能を鍛えることで、スポーツ競技の技術が向上することが様々な研究によって確証され始めています。すなわち、スポーツ競技向上は「技術力+筋力+心の力+目」と思われる。
①静止視力:
止まっているものを見きわめる能力。スポーツに必要な見る能力の基礎。この静止視力を低下させる近視、遠視、乱視など異常が明らかになったときは、すみやかにレンズによる矯正をすることが大切です。また、左右両眼の視力差が大きいときも、矯正して視力差をなかさなければなりません。
②動体視力:
眼の前に近づいてくるものや眼の前を横切るものをしっかり見る能力。
③眼球運動:
高速で動くものを目で追いかける能力。
④深視力:
距離感や位置のちがいを正しく見きわめる能力。
⑤焦点調節/輻輳開散能力:
遠近を交互に見るときに、すばやく眼のピント合わせをする能力。
⑥眼と手・足の協調性:
見て得た情報により、手や足ですばやく反応する能力。
⑦周辺視力:
眼のはし(視野の周辺)に映るものをキャッチする能力。
⑧瞬間視:
一瞬見て多くのものを見きわめる能力。
⑨視覚化能力:
プレー、パフォーマンスを頭の中で想い描く能力。
⑩コントラスト感度:
わずかなコントラストのちがいを見分ける能力。
⑪光感度:
暗さやまぶしさの中で視力を発揮する能力。
⑫利き目と利き手・足の関係:
プレー、パフォーマンスに、有利不利が生まれる。
⑬視覚集中力:
あらゆる見る能力を最大限に発揮するための集中力。
以上がスポーツビジョンです。
ビジュアル トレーニングで能力が高められるスポーツビジョンの視機能は、次の通りです。
②動体視力/③眼球運動/④深視力/⑤焦点調節 輻輳開散能力/⑥眼と手・足の協調性/⑥周辺視力/⑦瞬間視/⑧視覚化能力<スポーツビジョントレーニングより>
眼(視機能)のトレーニング
□動体視力のトレーニング
駅名の看板、駅にかかっている時計の時間などを、走っている電車の中から読み取ります。最初は首を視線と同じ方向に回しながら見るようにして、読めるようになったら、眼球だけで目標を追うようにします。 <過去のデータによると、筋力トレーニングほどの即効性があるわけではないようです。始めて1週間や2週間で、すぐに動体視力がよくなったりするこてはありません。>
・投球練習のボールを打席に立って見る:
野球のトレーニング
世界のホームランキング王貞治が行ったトレーニングです。ピッチャーの練習中に、打席の位置に立たせてもらい、リリースからキャッチャーミットに入るまで、じっくりボールを見きわめます。<特に動体視力が必要とされるスポーツに、野球/テニス/卓球/アイスホッケー/サッカー/カーレース/スキー等があげられます。>
プラットホームで電車を待っているときも、急行電車が通過するときに、車体に掲示された行先名、車体番号、乗客の様子など読むことによって、動体視力をトレーニングすることができます。
ボールに文字を書き込みます。数字、漢字、ひらがな、大きい字、小さい字、それを使ってキャッチボールし、キャッチをするときに、認めた数字をコールします。ボールのスポードを速くしても、小さい字が読めるようにトレーニングを重ねます。
ピッチバックネットとは、ボールをぶつけるとはね返ってくるネットで、ビーンバックとは、お手玉のようなものです。ビーンバックには、まず色紙をはりつけて、ピッチバックネットにぶつけ、はね返りをキャッチしますが、このとき見えた色をコールします。なれてきたら、次はビーンバックに数字や文字を書いた紙をはりつけ、やはりはね返りをキャッチして、見えた数字や文字をコールします。
バスケットボールやバレーボールなど、大きなボールに文字や数字を書いた紙をはり、その場で回転させて、文字や数字の大きさは、大小さまざまにし、読み取りがなれてきたら、ボールの回転のスピードは徐々に上げていきます。そのボールを高く放り投げたり、壁にぶつけたりして、キャッチするまでに、文字や数字を読み取るトレーニングも効果的です。
・対向車のナンバーをすばやく読み取る:
車を運転しているときに、対向車のナンバープレイトの数字を、すばやく読み取ります。低速運転で安全性に余裕があるときにだけ行ってください。道を歩いているときに、高速で走る車のナンバーを読み取るようにしてもよいでしょう。
マイクタイソンと動体視力
ボクシングの元世界ヘビー級チャンピオン、マイク タイソンは、衝撃度230キロの強烈なパンチで有名でした。一発のパンチで相手をいともたやすくノックアウトする試合ぶりを見て「人間じゃない」と思った人も多いことでしょう。しかし、実はタイソンの強さの秘密は、その殺人的なパンチだけではありませんでした。各トレーナーの故カス・ダマト氏は、少年院時代のタイソンに徹底的に防御の技術をたたき込んだそうです。上背のないタイソンが大男ばかりのヘビー級で生き残るためには、相手のふところに飛び込んで自分のリーチで勝負をすることが必要不可欠だったのです。ダマト氏の指導のおかげで、タイソンは、首を左右に振って相手のパンチを紙一重でかわすヘッドスリップを身に着けました。もちろん、タイソンに、その技術を身に着けるだけのたぐいまれな動体視力があったからです。ダグラスとの防衛線の日、トレーニング不足なのか体調が不十分だったのか、いつものタイソンの動きは鳴りをひそめ、相手のパンチをいいように浴びてしまいました。あの最強と思われたタイソンも、抜群の動体視力に支えられたすばやい動きもなくしては、王座を守ることはできなかったのです。
□眼球運動のトレーニング
家の中をうるさく飛び回るハエを、頭はあまり動かさず、眼球だけを動かすようにして眼で追いかけます。ばくぜんと眼で追うのではなく、しっかり焦点を合わせることが大切です。
<体力トレーニングと同様に、継続することが肝心で、特効薬的な効果を持つものではないので、地道にコツコツ続けることが大切>
・クルマから見える景色を眼で追う
クルマに同乗しているときに、流れる景色の中に目標を1つ決め、それを眼で追います。はじめは遠くの物を目標にし、だんだん目標を近くして、高速で後ろに過ぎ去る物も、眼で追えるようにします。
<視機能の中で、トレーニングが困難なものとして「近視」「遠視」「乱視」「コントラスト感度」「光感度」があります。>
・投球練習のボールを打席に立って見る
世界のホームランキング王貞治が行ったトレーニングです。ピッチャーの練習中に、打席の位置に立たせてもらい、リリースからキャッチャーミットに入るまで、じっくりボールを見きわめます。
ただ眼球を速く動かすだけでなく、眼球運動のトレーニングとしては不十分です。眼球をすばやく動かしながら、目標を見きわめることが大切です。そのためには、速読が非常に効果的だと考えられます。
・ボールスポーツの観戦
卓球、テニス、バドミントン、アイスホッケー、サッカー、バスケットボールなど、ボールスポーツで、とくにボールの動きが速い競技も実際に観戦し、ボールを目で追うのも、立派な眼球運動のトレーニングです。
・動きの速いテレビゲームに取り組む
テレビゲームも眼球運動の立派なトレーニング ツールです。できるだけ動きの速いものを選ぶのが効果的です。しかし、1時間も2時間も続けると、眼が疲労し逆効果。1日数十分にとでめます。
・左右の手の指を交互に見る
両腕を前に伸ばし、両手の人差し指を立てます。左右の指距離は、最初肩幅ぐらいにします。顔はまったく動かさずに眼球をすばやく動かし、左右の指の爪を交互に見ます。このとき爪をなんとなく見るのではなく、しっかりピントを合わせることが大切です。なれてきたら、両腕を広げ指の距離を長くしたり、位置を斜めにしたり、上下にしたりして、さまざまな眼球の動きをトレーニングします。
卓球は眼に悪い
卓球界の女王、小山ちれさんにお会いしたとき、失礼を顧みず、「ご自分の強さをどう分析されますか」とうかがったことがあります。即座に返ってきた答えは「タイミング、フットワーク、読み」を確実にする条件として、ボールスピンが分り、ボールの軌道、相手の動きがよく見えることをあげておられました。読みの深さやカンの素晴らしさというと象徴的ですが、実は、現状がよく見え、把握でき、最後の対応を選択できることをそう表現しているわけです。つまり、よく見えるためのハードウエアとしての「視覚」と脳に刻まれた豊富な選択肢を検索するソフトウエアとしての「経験」が結びついて、「読み」と「カン」が生まれているのでしょう。以前は、狭い空間で小さなボールのラリーに集中を強いる卓球は眼に悪く、「斜視」の一因になるとのまじめな論争があったそうです。他の種目に比べ、視覚にかかる負担の大きいことが議論の発端ですが、今日では、それ故にビジュアルトレーニングの卓球を応用することが検討されています。すでに卓球をトレーニングに加えているプロ野球チームもありますが、先んずれば人を制することができるか、期待したいと思います。