バドミントン上達のための 眼&トレーニング
シャトルコックを眼で捉えるをテーマに
バドミントンはハイレベルのプレーでは、あらゆる視機能を高度なレベルで働かせる必要があります。目まぐるしく高速で働くシャトルコックを目で追い、しっかり見きわめるには、すぐれた「動体視力」や「眼球運動」を必要とし、正確なインパクトには、「深視力」や「焦点調節/輻輳・開散」の能力が求められます。また、相手のポジションを見ながら、スマッシュの方向を決めるときなどは、「瞬間視」の能力が威力を発揮します。そして、不意をつく攻撃に対しては、「眼と手・足の協調性」を働かせ、すばやく反応しなければならないでしょう。必要レベルを5段階で表示すると ①.静止視力=4 ②.動体視力=5 ③.眼球運動=4 ④.焦点調節/輻輳・開散=5 ⑤.深視力=5 ⑥.瞬間視=5 ⑦.眼と手・足の協調性=5 ⑧.周辺視力=5 ⑨.視覚化能力=5 ⑩.視覚集中力=5 であります。
①.静止視力
各種スポーツビジョンの基礎になる能力
スポーツビジョンとは:スポーツで必要な見る能力のこと。
静止視力とは、学校などの視力検査で調べる止まったものを見分ける能力ですが、この能力は、下記で紹介してきた各種のスポーツビジョンとピッタリ一致するわけではありません。静止視力1.5の人が、1.0の人より動体視力や深視力などのスポーツビジョンがすぐれているとはいえません。しかし、静止視力0.2の人は1.5の人よりすぐれたスポーツビジョンを持つことはできないのです。静止視力が低いと満足なスポーツビジョンが望めず、次のようなハンデを負うことになるでしょう。<スポーツのための目の科学的強化法より>
・動体視力が不十分になり、高速での動くシャトルコックを正確に見極めることができません。
・深視力が不十分になり、シャトルコックと自分の距離感、相手と自分との距離感の目測を誤りやすくなります。
・相手や味方の表情の読みが十分に行えず、プレーへの対応が遅れてしまいます。バドミントンでは相手や味方の表情、眼つき、視線の行方などを正しくすばやく読み取ることにより、次のプレーを予測することが少なくないからです。
・コントラスト感度に影響がでます。シャトルコックと背景との区別がしにくくなったり、ユニフォームの色が見分けにくくくなります。薄暮や夜間のゲームなどで、照明が不十分なとき、その影響はさらに強くなります。
②.動体視力
動体視力とは、動いているものを正しく見極める能力です。自分と目標との関係を詳しく説明すると、次の3パターンあります。Ⅰ.自分が止まっていて目標が動いているとき Ⅱ.自分が動いて目標が止まっているとき Ⅲ.自分と目標が動いているとき いずれも、目には目標が動いているように見えます。もっとも、最後のケースは、自分と目標が同方向、同速度で動いていれば、目標は止まって見えます。また、動きの種類によっても、2種類に分けることができます。Ⅰ.目標が目に向かって直接的に近づいてくる動き Ⅱ.目標が目の前を横切る動き スポーツビジョンでは、この2種類の動きに対する眼の能力を、別々に測定しています。
③.眼球運動
眼球運動とは、視線を目標に向ける速さと正確さの能力です。難しい説明はさけますが、視線の方向がサッと動いたり、パッと変わったりするのは、人間が眼の中心で目標をとらえようとするためです。人の目は、中心だけでなくそのまわりでもものをとらえて見ることができます。たとえば部屋の時計を見ると、時計だけだなく、その隣の絵やポスターも眼に入ります。しかし人の目の仕組みは、眼の中心に入るものの色や形がよく見えるようになっていて、そのまわりのものの色や形は、あまりよく見えていないのです。だから眼は、常にめまぐるしく動き、目標を眼の中心に入れて、形や色をはっきり見ようとするのです。なお、眼球運動は、「追従運動」と「跳躍運動」の2種類に分けられます。「追従運動」とは、眼の中心でものをとらえたまま、ものの動きに合わせて眼球を動かす運動です。バドミントンで、シャトルコックを眼で追い続けるときの運動です。「跳躍運動」とは、いくつもの目標に、パッパッと視線を飛ばしていく動きです。
④.深視力
深視力とは、距離や距離の差を感じる能力です。鉛筆を両手に持ち、両目で見ながらその先を図のように空中で合わせてみてください。ひじは伸ばしきらないように。難しいけれど、なんとか合わせることができます。では今度は、片目でそれをやってみてください。なかなか合わせられないはずです。このことから、人は両目を使うことによって、眼から2本のエンピツの先までの距離や2本のエンピツの位置関係をたしかめていることがわかります。ではなぜ両目を使うと、距離や位置関係が正確にわかるでしょうか。それは、右目に見える映像と左目に見える映像が、わずかにちがうからです。寝転んで、自分の右足のつま先を見て下さい。左目を閉じて右目だけでつま先を見て下さい。次に左目だけで見て下さい。右目と左目では、少しちがった像が見えます。私たちはこの違った像を、猛の中で1つにまとめることにより、立体的な、つまり距離感や位置関係がわかりやすい像を見ることができるのです。では、両目を使うことによってなりたつ深視力が不十分だと、距離感や位置関係はまったくわからないのでしょうか。そんなことはありません。私たちは経験や知識によって、距離感や位置関係を知ることができるからです。しかしそれは「ほぼ」であって、十分正確に見極めることはできないということでもあります。場合によっては、経験や知識にじゃまされて、まちがって判断してしまうこともあります。
ちょっと話はそれますが、立体写真は、この原理を利用したものです。左右の目でそれぞれ見たような少し写り方のちがう写真を2枚用意して、1枚を右目だけ、もう1枚を左目だけで見るようにし、あたかも奥行のある写真であるかのように錯覚する仕組みになっています。
⑤.瞬間視
瞬間視とは、一瞬のうちに多くの目標を認知する能力です。瞬間的に見える映像から、必要な情報をどれだけたくさん得られるかは、人によってちがいます。以前フジテレビ系の「なるほど・ザワールド」という番組の中で、瞬間視力を働かせるクイズがありました。ある動く映像を流している途中で、瞬間的に別の止まった映像を映し出すのです。回答者は、瞬間的にあらわれた像が何かを当てます。回答者の中には、いつもすばやく見つける人がいるかと思えば、まったくわからない人もいます。また、同じ人でも瞬間視力は、そのときどきの調子=覚醒度(さえの度合い)によって左右されやすく、いわゆる「乗っている状態」や「ハイな状態」のほうが、能力が高まるようです。
⑥.目と手・足の協調性
目と手・足の協調性とは、視覚で認識した目標に対しすばやく手(または体・足)で反応する能力。ものを見て動作を始めるまでの眼と脳と手・足のメカニズは、カンタンに説明すると次の通りです。眼で得た情報を脳に送り、脳でその情報の内容を調べ、今までの知識をもとにある判断を下し、その判断を実現させるために必要な動作の指令を手足に出します。脳がコンピューターだとすれば、眼は入力回路で、手足は出力回路となるわけです。例えば、アメリカの映画で、こんなシーンがありました。旅に出た高校生ぐらいの少年がお金に困り、見知らぬ町の酒場に入って、見るから強そうな荒れ男たちに向かって、大声でこういいました。「誰かオレと賭けをしないか。」男たちは生意気なガキだと胸ぐらをつかんでつめより、ケガしないうちにとっとと出ていけと追い払おうとします。しかし少年はひるむことなく続けます。「54枚のカードの中から、好きなカードを選べ。それをまぜたカードをよく切って、放り投げろ。オレは、選んだカードに空中でナイフを突き刺す」。酒場中が大笑いをしました。けれど少年は真剣です。その真剣さに負けて、酒場ぼ何十人もの客が書けに参加することになりました。もちろん少年に賭ける者は誰一人としていません。荒くれ男の一人がカードを選び、54枚のカードを空中に放り投げました。カードは飛び散り、ヒラヒラと落下してきます。ナイフを左手に持った少年の目が、チカチカと動き、選ばれたカードを探します。少年の左手が動き、ナイフがキラリと光って飛び、見事1枚のカードを貫いて壁に突き刺さりました。それまで騒然としていた酒場が水をうったように静まり返り、少年は賭けに勝ちました。こんな話など実現にはあり得ないことかも知れません。しかし、目から入力した情報により、すばやく手で正確に反応する能力を高めていけば、常識ではあり得ないことも、実現する可能性があります。神業! ミラクル! アンビリーバブル!などと驚嘆に値するスポーツのプレーは、神の仕業ではなく、奇跡ではなく、信じられないことでもないのです。目と手・足の協調能力を高めた先にある人間の仕業であると考えたほうがよいでしょう。
⑦.周辺視力
周辺視力とは、数値で客観的に評価するのは困難だが、周辺視野域における認知力(動きや光、あるいは大きな視標)をチェックする能力。②の眼球運動のところでも説明しましたが、人はものを見るとき、眼玉をグリッと動かして、視野の中心で目標をとらえようとします。これは、視野の中心で見たほうが、ものの色や形がよく見えるからです。視野の周辺にいくほど、色や形がわかりにくくなります。では、1つの目標を目の中心で見るとき(=中心視)、周辺視力は不必要になるのでしょうか。だとすれば、スポーツのプレーの多くは、中心視をもとにしているので、ノールック・パスなどの特殊な場合以外、周辺視力は、役に立ってこないことになります。バドミントンの場合は、特にダブルスにおいてシャトルコックと味方との位置関係に必要な能力と思われます。こんな2つの実験があります。野球の外野手が本塁へバックホームの遠投をするとき、また、バスケットボールでフリースローをするとき、周辺視野をふさぎ中心視だけにすると、コントロールや成功率は、どのように変化するか。大学野球部の外野手14人に、ホームベースから85m離れて、バックホームしてもらいました。結果は、周辺視野をふさぐ割合を高くするほど、ホームベースから左右にそれる距離が大きくなりました。同じように大学バスケットボール部の部員20人で行ったフリースローの実験でも、周辺視野が狭くなるにつれて、成功率は悪くなりました。この2つの結果は、周辺視力が体のバランス保持に関係していることを示します。体のバランスは、耳の中の機能によっても保たれますが、視覚にも左右されます。片足立ちして両眼を閉じたり、両岸の外側を紙などでふさぐと、ふらふらして立っていられなくなることからもわかります。周辺視野が狭くなると目標の位置を見極める感覚が低下し、さらに体のバランスが悪くなり、その結果、遠投やフリースローのコントロールが乱れてくるのです。
⑧.視覚化能力
視覚化能力とは、視覚的なイマジネーションで、目に見えるように頭の中で描ける能力。実際には眼を使わなくても、使ったような効果を得るためには、漠然とイメージするのではなく、本当に自分の体を動かしている感じを眼で見ているようにしらなければなりません。たとえば、バドミントンでバックハンドのアングル・ショットを視覚化します。そのとき、なんとなくそのプレーをイメージするのではなく、足の踏み込み方、バックスイング、インパクト、フォロースルーなど、一連の動作をこと細かく思い描くのです。そうすると、思い描いた動作に必要な筋肉が、収縮することがあるのです。そんな実験結果も報告されています。たとえ筋肉が収縮しなくても、正確な視覚化を心がけることにより、脳から理想的な動作司令を発するトレーニングとなります。その結果、現実にプレーをするときも、スムーズですばやい動作司令が発信され、すばらしいプレーやパフォーマンスが生み出されることになるのです。
⑨.視覚集中力
集中力には精神と視覚の両方がある。視覚集中力とは、見えていても見えていないことを失くす能力。たとえばアメリカの有名なプロのテニス・コーチ、ティモシィ・ゴールウェイは、正確なグランド・ストロークをするために、テニスボールの縫い目に焦点を合わせるか、集中するようにと指導しました。また、NFLクリーブランド・ブラウンズのコーチだったブラント・コリアは、クォーターバックにレシーバーの体全体ではなく、胸、片、顔、腰などに焦点を合わせるようにと指示しました。ニューヨーク・ジャイアンツの名クォーターバック、スコット・ブルナーもブラウンズの意見には賛成のようで、「目標を小さく決めると、ミスがへり、正確性があげられる」といっています。あるいは、NBAニューヨーク・ニックスで活躍したビル・ブラッドレーは、ニックスに入る前ブリストン大学で、21回連続フリースロー成功という大記録をつくりましたが、その秘訣は、フリースローのときリング全体を漠然と見るのではなく、ネットをリングに固定するためにリングのい下に取り付けられた小さなスチールの穴のひとつに集中することでした。これらの話に共通していることは、目標を漠然と見るのではなく、目標の中のより小さなポイントに焦点を合わせることです。それにより、視覚集中力が一段と高まり、動体視力、眼球運動、深視力などのスポーツビジョンが効果的に働き、ひてはすぐれたプレーやパフォーマンスが生み出されることがあるのです。
⑩.焦点調節/輻輳・解散
自動的にピントを合わせてしまうAF(オートフォーカス=自動焦点)カメラが発明されたとき、誰もがびっくりしました。しかし、人の目の自動焦点調節機能に比べたら、まだまだその能力は幼稚です。なにしろ眼は、遠くは夜空の星から、近くは眼の前数センチのものまで、一瞬のうちにピントを合わせてしまうのですから、そんなすごいカメラはありません。しかも眼はカメラとはちがい、レンズを前後に移動させて焦点距離を変えるのではなく、レンズ(水晶体)の厚みを変えることで、焦点距離を変えているのです。最近のハイテクでも、このような眼の機能をまねすることはできません。さて、スポーツビジョンとして問題になるのは、いろいろな距離の目標に焦点を合わせるために、水晶体が厚みを変えるときの速さと正確さです。たとえば、テニスでは、インパクトの瞬間に手元のボールに焦点を併せ、次にすぐさま相手コートに飛んでいったボールや相手の動きに焦点を合わせなければなりません。また、その逆もあります。とにかく、近い目標と遠い目標を交互に、どれだけすばやく正確にとらえることができるかが、非常に重要になってくるわけです。このときの、水晶体を厚くしたり薄くしたりする能力を、焦点調節能力とよんでいます。また、近くにあるひとつの目標を見るときには、両眼が寄り眼になります。この両眼の動きを輻輳といいます。そして遠くにあるひとつの目標を見るとき、両眼の視線は開いて平行に近づいていきます。これを開散といいます。つまり、焦点調節と輻輳・開散は、いつも連動して起こるのです。近くの目標を見るときは、水晶体を厚くして寄り目になり、遠くの目標を見るとき、水晶体を薄くして視線を開くのです。この連動した動きが、スムーズにすばやく正確に行われることにより、さまざまなスポーツビジョンが効果的に働きます。
⑪.コントラスト感度
色や明るさのわずかなちがいを見分ける能力
人によってコントラスト感度は違う・・・・・
日本初の屋根つき球場、東京ドームができたころ、こんなことがよく起こりました。外野手が高くあがったフライをとるとき、ボールを見失ってしまうことがあったのです。白いボールと屋根の色が、とてもよく似ていたからだす。甲子園の高校野球でも、白いシャツの観客席を背景にしてライナーをとろうとするとき、同じことがときどき起こります。このように、わずかにちがう色や明るさを見分ける能力は、スポーツでは非常に大切で、その能力は、人によってかなり差があることは、あまり知られていません。つまり、コントラスト感度の優れたA選手は、感度の劣るB選手よりも、東京ドームや甲子園で、フライの捕球ミスをする可能性が低いということです。野球に限らず卓球やバドミントンなども、観客の白いシャツにボールやシャトルコックがmぎれることがあるので、コントラスト感度がプレーに影響し、勝敗を左右することもあり得ます。<スポーツのための目の科学的強化法より>
コントラスト感度は、どちらかといえば、静止視力がいいと、いいようです。静止視力1.5の人のコントラスト感度は、0.2の人より上です。したがって、静止視力が非常に低い人は、メガネやコンタクトレンズで視力を上げれば、コントラスト感度も上がります。また、静止視力は明るいほどよくなる。という性質も知っておくとよいでしょう。夜よりも昼間、曇りよりも晴れの日のほうが静止視力は上がり、コントラスト感度もよくなるのです。
動体視力や深視力など、スポーツビジョンの中には、トレーニングによって向上させることができる能力が少なくありませんが、コントラスト感度は、トレーニング効果が期待できません。
同じような明るさや色を見分ける能力は、完全に網膜にある細胞の感度によるからです。網膜の細胞をトレーニングすることはできません。網膜の細胞は、背景と目標とはっきり見分けるために、こんな働きをしています。左上図Aは、グレーの空に上がったグレーのボールです。私たちの目には、このように映っているかのように思われますが、実は極端に説明すれば左下図Bのように映っているのです。つまり、網膜の細胞は、背景から目標をくっきり浮かび上がらせるために、自動的に目標の輪郭の内側を暗く、輪郭の外側を明るく映すのです。この輪郭を明るく暗くしたりする能力がコントラスト感度で、その能力は人によってもともとちがい、トレーニングする方法は、今のところ見つかっていません。ただし、網膜の細胞が元気なほどコントラスト感度はよくなるので、疲れを十分に取りビタミンA,B2をとることにより、多少の向上が望めます。なお、ビタミンAは,レバー、ニンジン、緑黄色野菜、乳製品などから、ビタミンB2は、牛乳、レバー、緑黄色野菜、卵、ピーナッツなどからとることができます。
⑫.光 感 度
暗さやまぶしさの中で視力を発揮する能力
網膜の細胞で能力が決まる・・・・・
光感度は、網膜の細胞の性質によって、その能力が決まります。マメラのフイルムには、光が弱いときでもはっきり映る高感度フィイルムや、光が強いときでもハレーションを起こさない低感度フィルムがありますが、人の目の網膜は、高感度から低感度まで、あらゆる光に感応できるフィルムが用意されていると考えることができます。そして、弱い光に感じる網膜細胞の感度の高さ、一度強い光によって興奮し映像情報を脳に送った細胞がふつうの状態に戻るまでの時間、これらは、人によってちがうことが知られています。この能力は先天的なもので、トレーニングによって高めることはできません。ただし、ビタミンAが欠乏すると夜盲症となり、暗い中での静止視力が低くなるので、レバー、ニンジン、黄緑色野菜、乳製品を十分にとることにより、この能力を正常に保つようにすることが大切です。
光感度は、暗い中で、ものをしっかり見る能力が含まれるので、コントラスト感度と似た能力といえます。薄暗い中で、野球やサッカーの試合をするとき、ボールや選手の動きを正確に追うために必要な能力は、光感度であり、コントラスト感度です。しかし光感度のほうには、暗い中で微妙な明るさや色のちがいを判別する能力だけでなく、明るすぎる背景の中で、ものを正確に見分ける能力や、まぶしいものを見たあとで、ものを正確に見る能力も含まれます。たとえばバレーボールで、体育館の強烈な照明が入った直後に、ボールを見なければならないとき、まぶしさからの回復力が弱いと、ボールを正しく見れず、レシーブやスパイクがうまく行えないことがあるのです。
暗さの中で視力を発揮する能力は、一般的にはあまり重要とはいえません。ある特別な場合、たとえば照明設備の不十分なグラウンドで、薄暮や夜間に野球、サッカー、ラグビーなどの試合をするときに必要とされるだけです。一方、まぶしさからの回復力は、屋外屋内の競技で、照明が視野に入る競技、屋外のボール・スポーツで、ボールが空高く上がる野球、サッカー、ラグビーなど必要とされる場合があります。また、テレビ中継のライトやカメラのフラッシュがあるときも、まぶしさからの回復力が必要とされる場合があります。
ラケットボールのシュマッシュの初速は、時速200㎞に達し、バドミントンでは、300㎞にもなります。もちろん初速と終速の落差は大きく、手元にきてかなり減速はしますが、やはり打ち出しのシャトルやボールの方向、十分に見きわめることが必要です。このように高速で動く目標を正確に見きわめレシーブするためには、レベルのお高い動体視力が求められます。<静止視力を低下させる近視、遠視、乱視などは、トレーニング効果がほとんどでないので、メガネやコンタクトによる矯正をしてから行って下さい>
動体視力はトレーニングによって成果がでます。
ボールに文字を書き込みます。数字、漢字、ひらがな、大きい字、小さい字。それを使ってキャッチボールし、キャッチするときに、読めた数字をコールします。ボールのスピードを速くしても、小さな字が読めるようにトレーニングを重ねます。
バスケットボールやバレーボールなど、大きなボールに文字や数字を書いた紙をはり、その場で回転させて、文字や数字を読み取ります。文字や数字の大きさは、大小さまざまにし、読み取りがなれてきたら、ボールの回転のスポードは徐々に上げていきます。
スマッシュチャンスがきたら、思い切りラケットを振りぬき、強烈なシャトルやボールを相手に見舞います。しかしこのとき、シャトルやボールをよく見るだけでは不十分でしよう。相手のポジションをチラッと見て確認し、相手がレシーブしにくい場所をねらってスマッシュを打ちこまなければなりません。したがって、チラッと見て目標を見きわめる能力、つまり瞬間視がスマッシュをより効果的なものにするといえます。
瞬間視はトレーニングによって成果がでます。
フラッシュカードは、カードの束に数字を書き込み、それをめくって数字を瞬間視するトレーニング、ツールです。頁は手でめくり、速度は一定にならないため、タキストスコープほど厳密なトレーニングはできませんが、家などでも手軽に利用できるので、とても便利です。幼児の大脳賦活訓練にも使われている方法です。
瞬間視力を測るときには、タキストスコープ(瞬間露出器)を使います。2m離れたスクリーンに、6ケタの数字を0.1秒間映し、いくつ数字が読めたかで調べます。ふつうの人が読めるのは、4ケタぐらいですが、トップ・アスリートの中には、6ケタすべてを読み取ってしまう人がいます。また、プロ野球選手の中に、6ケタを2段にして12個の数字を並べて映したところ、なんと1段半、つまり9個まで読み取ってしまった人もいます。
・フラッシュカードの作り方:
10×15cmのカード(情報カードでもよい)を50枚用意し、それぞれのカードの上端中央に黒い点を書きます。一番最初のカードには何も書かず、次のカードには黒い点から左右1.2cm離して2ケタの数字を書きます。そして次からは、8mmずつ離して同じように書いていき、両端までいったら、今度は8mmずつ黒い点に近づけ書いていきます。子供の場合は、動物や遊びの絵でもかまいません。
・トレーニング方法:
目から30cm〜40cm離して持ち、頁をめくって見えた数字を読み上げます。見つめるポイントは黒い点です。数字が左右に離れるほど読みにくくなるので、頁をめくる速度を遅くします。頁をめくる速度を上げても、数字が読み取れるようにトレーニングします。
コーチが左右の指で数字を瞬間的に出します。指の合計が偶数なら右、奇数なら左へ数歩ダッシュします。瞬間視と足の協調性のトレーニングになります。<パソコンを使った測定機器を、そのままトレーニングに用います。5段階評価のレベルを上げたり、高いレベルを維持するようにトレーニングを重ねます。>
敵はレシーブしやすい場所に、シャトルやボールを送りこみません。また、反応しやすいリズムやタイミングでも、ストロークをしてくれません。むしろまったく逆です。レシーブしにくいところ、反応しにくいリズムやタイミングで、攻撃をしかけてくるのがふつうです。つまり、不意をつくのがこのゲームの特徴ですから、不意をつかれたときにも、すばやく反応できるように、眼と手・足の協調性を高めておく必要があるのです。
眼と手・足の協調性はトレーニングによって成果がでます。
ゲームセンターなどにあるモグラたたきが、絶交のトレーニング、ツールとなります。コツは、ある一点に目をこらさず、全体をぼんやり見ておくこと。得点表示されるので、トレーニング効果がわかります。<静止視力を低下させる近視、遠視、乱視などは、トレーニング効果がほとんどでないので、メガネやコンタクトによる矯正をしてから行って下さい>
・リフティング、バレーボール
足と頭だけを使ったバレーボール使います。バレーボールのコートやネットがなくても、2,3人が組になり、ラインだけを引いて、バレーボールのルールでゲームをするとよいでしょう。
ラリーを制するのは、強靭な脚力といわれています。そしてもう一つ大切なのが、タフな眼球運動です。コートを何回も何回も行き交うシャトルやボールを、視野の中心でしっかりとらえ続けるには、スムーズで俊敏で持続力のある眼球の動きが必要になってきます。眼球ではなく首を先に動かしてシャトルやボールを追ってしまうと、その速い動きに目がついていかなかったり、体軸がブレてショットの正確さが失われることがあります。<効果があると信じてトレーニングすることが大切で、疑っている間は何の効果もない>
眼球運動はトレーニングによって成果がでます。
クルマに同乗しているときに、流れる景色の中に目標を1つ決め、それを眼で追います。はじめは遠くの物を目標にし、だんだん目標を近くして、高速で後ろに過ぎ去る物も、眼で追えるようにします。<効果があると信じてトレーニングすることが大切で、疑っている間は何の効果もない>
卓球、テニス、バドミントン、アイスホッケー、サッカー、バシケットボールなど、ボールスポーツで、とくにボールの動きが速い競技を実際に観戦し、ボールを目で追うのも、立派な眼球運動のトレーニングです。