ご存知ですか?眼から肌が紫外線により日焼けすること・・・
屋外での
スポーツ等の紫外線対策は万全ですか?
目に紫外線でも肌が日焼け
大阪市立大学医学部の研究チームが実証
肌は紫外線を直接浴びなくても目で受けるだけで日焼けするという実験結果を、大阪市立大の研究チームがまとめた。これまで日焼けは、皮膚が紫外線に反応してメラニン色素を作り、日があたった部分だけが黒くなるとされていた。チームは、美白にはサングラスも必要、とみている。同大学医学部の井上正康教授(生化学)らは、マウスを3群に分け、紫外線を ①あてない ②耳の皮膚だけにあてる ③目だけにあてる の各群でメラニン色素のでき方をみた。すると、③のマウスの耳にも、②とほぼ同じ量のメラニン色素ができていた。③のマウスで、瞳孔を調節する三叉神経を切った場合は①のマウスと同様、メラニン色素はできなかった。また、三叉神経を切らなくても脳の中心部にある下垂体を切り取ると、メラニン色素はできなかった。チームは、目が紫外線を受けると、三叉神経を通じて下垂体に「体に悪い紫外線が来たぞ」という情報が伝わり、下垂体が「メラニン色素を作れ」と指示し皮膚が黒くなる、とみている。井上教授によると、紫外線は角膜に細かな炎症を起こす。この炎症の刺激を受けて、紫外線から身を守るため、全身の皮膚にメラニン色素を作らせるようになっているらしい。「長そで長ズボンで日光を防いでも、紫外線カットのサングラスをしないと万全の日焼け対策とはいえませんね」 日焼けに詳しい市橋正光神戸大教授(皮膚科)の話:マウスの結果が人間にあてはまるかどうかわからないが、興味深い。人間で、目にあたる紫外線が日焼けにどの程度関与しているのか、さらに研究してほしい。2001年8月1日朝日新聞より
紫外線に対する関心は日本でも少しずつ高まってきています。オゾン層破壊による紫外線増加といった環境問題としての関心だけでなく、紫外線の浴びすぎによる健康への影響についても同様です。紫外線の浴びすぎは、日焼け、しわ、シミ等の原因となるだけでなく、長年紫外線を浴び続けていると、時には良性、悪性の腫瘍や白内障等を引き起こすことがあります。しかし、紫外線は悪い影響ばかりではなく、カルシウム代謝に重要な役割を果たすビタミンDを皮膚で合成する手助けもします。最適な紫外線量には個人差がありますが、正しい知識を持ち、紫外線の浴びすぎに注意しながら上手に紫外線とつきあっていくことが大切です。
■日焼けの種類
サンバーン(sunburn):紫外線にばく露した数時間後から現れる赤い日焼け
サンタン(suntan):赤い日焼けが消失した数日後に現れ、数週間から数か月続く黒い日焼け
■紫外線の性質
紫外線は波長によって、A、B、Cの3つに分けられます。C領域紫外線(UV-C)は空気中の酸素分子とオゾン層で完全にさえぎられて地表には届きません。また、B領域紫外線(UV-B)もオゾン層の変化に影響されることから、現在その増加が懸念されています。
UV-C:大気層(オゾンなど)で吸収され、地表には到達しない。 UV-B:ほとんどは大気層(オゾンなど)で吸収されるが、一部は地表へ到達し、皮膚や眼に有害である。 日焼けを起こしたり、皮膚がんの原因となる。 UV-A:UV-Bほど有害ではないが、長時間浴びた場合の健康影響が懸念されている。
紫外線は私たちの目には見えませんが、太陽光(日射)の一部であり、基本的な性質は可視光線と同じです。季節や時刻、天候などにより紫外線の絶対量や日射量に占める割合は変化しますが、可視光線と同じように、建物や衣類などでその大部分が遮断されます。一方、日中は日陰でも明るいように、大気中での散乱も相当に大きいことがわかっています。中でも、B領域紫外線(UV-B)は散乱光の占める割合が高くなっています。
1 薄い雲ではUV-Bの80%以上が透過し、屋外では太陽から直接届く紫外線 量と空気中で散乱して届く紫外線量がほぼ同程度である。 2 地表面の種類により紫外線の反射率は大きく異なる(新雪:80%、砂浜: 10 〜25 %、コンクリート・アスファルト:10%、水面:10 〜20%、 草地・芝生、土面:10%以下)。 3 標高が1000 m上昇するごとにUV-Bは10 〜12 %増加する。 4 建物の中では屋外の10%以下の紫外線がある。 5 帽子の着用で20%減少する。 6 UVカット機能を持った眼鏡やサングラスの着用で90%減少する。 (一般に、ガラスの眼鏡はUV-Bをカットしますが、プラスチックの眼鏡の 場合は“UVカット”表示のあるものを選びましょう。また、正面からだけで はなく横からのばく露もあるので、顔の形に合った眼鏡やサングラスを選び ましょう。)
■紫外線の強さ
紫外線の強さは、時刻や季節、さらに天候、オゾン量によって大きく変わります。同じ気象条件の場合、太陽が頭上にくるほど強い紫外線が届きます。一日のうちでは正午ごろ、日本の季節では6月から8月に最も紫外線が強くなります。 山に登ると空気が薄く、より強い紫外線が届きます。標高の高いところに住む人たちは強い紫外線を浴びるために、標高の低い土地に暮らす人と比較して大きな影響を受けます。また、雪や砂は紫外線を強く反射するので、スキーや海水浴のときには、強い日焼けをしやすくなります。
■オゾン層
オゾンは、地上付近から50km以上の高さにまで広く分布しており、このオゾン層が紫外線をさえぎって、地球上の生命を守っています。紫外線(特にUV-B)強度は、太陽高度角、天気、オゾン全量、大気の汚れの程度などに応じて変化しますが、他の条件が同じ場合、オゾン層の厚さが1%減ると、地上紫外線強度は約1.5%増えるといわれています。オゾン層は、「厚さ3ミリメートルの宇宙服」に例えられることがあります。これは、上空に分布するオゾンを集めて地上と同じ1気圧に圧縮すると約3ミリメートルの厚さになるという意味です(この厚さをオゾン全量と呼びます)。実際には、オゾンは、その90%が地上から約10 〜50km上空の成層圏と呼ばれる領域に集まっているため、その領域は「成層圏オゾン層」とも呼ばれています。 フロンは、塩素と炭素、フッ素でできた化合物の総称で、変質しない、燃えない、毒性がない、しかも役に立つという性質があり、スプレーの噴射剤、エアコンや冷蔵庫などの冷媒、断熱材の発泡、半導体の洗浄など、幅広く使われてきました。ところがフロンは地上付近の空気中では壊れず、そのまま成層圏まで上昇し、そこで紫外線(UV-C)を浴びて壊れます。その際フロンは塩素原子を放出しますが、これが連鎖反応的にオ ゾンを破壊することがわかりました。1個の塩素は、多いときには数万ものオゾンを破壊するといわれています。
■赤ちゃんと紫外線
天気の良い日に赤ちゃんを散歩に連れて行くときは、強い日差しが直接赤ちゃんに当たらないよう工夫して外出しましょう。日差しの強い10 時〜14 時頃を避け、朝夕の涼しい時間帯に、薄い長袖を着せてあげ、帽子やベビーカーの日よけを利用するようにしましょう。赤ちゃんの皮膚は大人よりデリケートで、紫外線で受ける影響には個人差がありますので気をつけましょう。一方、母乳栄養の赤ちゃんやアレルギーなどで食事制限をしている赤ちゃんは、骨の成長に必要なビタミンDが不足しがちです。妊婦さんや授乳中のお母さんは、ビタミンD不足にならないよう、普段から食事に十分気をつけるほか、冬場などには一日15 分程度、適度な日差しを浴びることも効果的と考えられます。
2008年7月7日(月)から北海道洞爺湖でG8サミットが開催されました。その最大のテーマは、地球温暖化対策です。現在オゾン層の破壊で日本でも年々有害な紫外線が増加しています。特に紫外線対策がもっとも必要な子供達に対する具体的な活動が日本では殆ど行われていないのが現状です。成長期の子供が受ける紫外線の量がその後に与える影響が大きいことが医学的にも証明されている中、zerorh+は、まず子供の目を守ることが最優先と考えています。外で遊ぶ機会が最も多い子供達全てがサングラスをかけてもらえれば理想ですが、親の意識も低い中では大変難しいと思います。 ■子どもと紫外線 世界保健機構(WHO)は、子供の紫外線対策の必要性を訴え続けています。 子供に紫外線対策が重要な理由として下記の5点を挙げています。 1、 子供時代は細胞分裂も激しく、成長が盛んな時期であり、 大人よりも環境に対して敏感である 2、 子供時代(18歳未満)の日焼けは後年の皮膚がんや 眼のダメージ(とくに白内障)発症のリスクを高める 3、 生涯に浴びる紫外線量の大半は18歳までに浴びる 4、 紫外線被ばくは、免疫系の機能低下を引き起こす 5、 子供たちは室外で過ごす時間が多いため、太陽光を浴びる機会が多い 子供ほど紫外線の影響をたくさん受けている。 オーストラリアで行なわれた疫学調査で、子供の頃に強い太陽紫外線を浴びる環境にいた人が、大人になって皮膚ガンになりやすいことが証明されました。 オーストラリアの白人は、イギリスなど年間の太陽紫外線が少ない所からの移民です。子供の頃に移民すれば、長年にわたり大量に紫外線を浴びることになるわけです。 オーストラリアで生まれた子供や10歳までに移民した人に皮膚ガンが多く発症することがわかったのです。 子供の皮膚は大人に比べて分裂する回数が多いのです。そのため、紫外線で遺伝子に傷をつけたまま遺伝子DNAを合成することが多くなり、遺伝子が元の通りに治らないで間違うことも多くなります。 これまでの多くの疫学調査では、年間の紫外線照射量が多い地域の住民や、屋外労働者に皮膚ガンが多いということの他に、同じ紫外線量でも子供の時に浴びるほど、紫外線の悪い影響が大きいということがわかっています。 一生に浴びる紫外線量のうち50%は、18歳ぐらいまでに浴びてしまうといわれています。 若々しく健康な皮膚を維持するためには、小児期から無駄な日焼けを避けることが重要です。 紫外線から赤ちゃん、子供達を守るのは、我々大人の責任だと思います。 大人の対応によって、子供達をシミ、腫瘍や老化、また皮膚がんから防ぐことができるのです。 ■職業における紫外線ばく露 紫外線ばく露をうける職業には大きく分けて、太陽光からの紫外線のばく露をうけるものと人工光源からの紫外線のばく露をうけるものがあります。最大の職業性紫外線ばく露は太陽光からのばく露をうける職業であり、ほとんどの屋外作業が該当します。 とくに農業、漁業、土木建設業、雪・氷上作業でばく露が多くなります。 太陽以外の人工光源から紫外線をうける作業としては、アーク溶接・溶断作業、紫外線殺菌灯 下での作業、遺伝子検査作業、医学的利用、日焼けサロン、などがあります。 太陽光からの紫外線とは異なり、UV-Cも含まれています。このため、アーク溶接などの作業では、発生する紫外線で電気性眼炎(角膜炎)※を起こす危険性があります。溶接熱源から放射される紫外線量は、溶接法や溶接電流等により大きく異なり、太陽光からの紫外線量より低い場合から数十倍になる場合まであります。 数メートルほどの距離から溶接熱源を3 〜10 分程度見ていると角膜炎・結膜炎など急性障害の電気性眼炎を引き起こすことがあります。そのため、直接の作業者だけでなく周辺の作業者への防護も気をつけないといけません。症状が出るまでには数時間を要し、一日の仕事を終え帰宅後、夜に症状が出ることが多くなります。症状は涙を伴い目の激しい痛みと異物感を生じます。またまぶたを含め顔面の発赤、結膜(白目)の充血を伴います。 通常、これらの症状は湿布で冷やし、安静を保つことで12 〜24 時間で自然に治まります。痛み・刺激症状が強い場合には眼科を受診し、麻酔薬の入った目薬で痛みをとり、抗菌薬や角膜保護薬を併用するなどの適切な治療することが望まれます。 ■日焼けサロンと紫外線 日焼けサロンでの日焼けは、人工的にUV-B をカットして、UV-A だけを照射することによって引き起こされる、サンタン(黒い日焼け)によるものです。 しかし、UV-A の影響は、肌の色を黒くする(サンタン)だけではありません。過剰なUV-A のばく露により、水疱やシミ等の障害が起こる可能性があると言われています(WHO : Environmental Health Criteria No.160、1994)。また、紫外線ランプの照射にあたっては眼へのばく露を防ぐことも大切です。 最近のWHOの報告では、sunbed(日焼けサロン)の危険性を指摘し、18 歳以下の使用を禁止するよう勧告しています。同様に、欧米では多くの国々が法律による規制を始めています。
紫外線による健康影響
紫外線が増加すると、水上・陸上の生態系や農業生産への影響のほかに、人へのさまざまな悪影響があります。多くの研究により、紫外線を浴びすぎると人の健康に影響があることがわかってきました。
■紫外線と眼
波長が280 ナノメートル以下の光は眼球表面の角膜ですべて吸収されます。これより長い波長の紫外線も、大半は角膜で吸収されますが、角膜を通過した紫外線のほとんどはレンズの役割を担う水晶体で吸収されます。残りの1〜2%が水晶体を通過して網膜まで到達します。紫外線ばく露による眼への影響については、急性の紫外線角膜炎と慢性の翼状片、白内障が知られています。
強い紫外線にばく露したときに見られる急性の角膜炎症で、結膜(白目)の充血、異物感、流涙がみられ、ひどくなると強い眼痛を生じます。雪面など特に紫外線の反射が強い場所で起きる“雪目(ゆきめ)”が有名です。昼間に紫外線にばく露した場合、夜から深夜あるいは翌朝にかけて発症し、大部分は24 〜48 時間で自然治癒します。
眼球結膜(白目)が翼状に角膜(黒目)に侵入する線維性の増殖組織で、瞳孔近くまで進展すると視力障害をきたします。通常は30 歳代以降に発症し、進行は早くありません。農業、漁業従事者など戸外での活動時間が長い人に多発し、紫外線ばく露を含めた外的刺激がその発症に関係すると考えられています。治療は外科的な切除を行いますが、2〜7%の人は再発し再手術が必要になります。
白内障は眼科疾患の中で最も多い病気のひとつで、眼のなかでレンズの役割を担う水晶体が濁るため、網膜まで光が届かなくなり見え方の質が低下してきます。初期には水晶体が硬くなるため老眼が進行し、濁りが強くなると視力が低下し、進行すると失明に至ります。白内障は80以上のタイプがあるといわれていますが、加齢により発症する白内障には3つの代表的なタイプがあり、それぞれ原因や見え方への影響も異なります。日本人で最も多く見られる皮質白内障というタイプでは、紫外線との関係が知られています。治療は混濁した水晶体を眼内レンズと置換する手術が行われます。
本来ビタミンとは、からだには欠かすことができない栄養素で、食物からしか得ることのできない微量物質のことを指していました。ところがビタミンDは自分のからだの中で合成することができます。からだの中でビタミンDが合成される場所は皮膚であり、そして合成には紫外線の助けが必要となります。 ビタミンDの主な働きはカルシウム代謝の調整です。体内のカルシウム環境は消化管、骨、腎臓の働きによって保たれていますが、ビタミンDはこれら3つの臓器に働く重要なビタミンです。食物から摂取したり、皮膚で合成されたりしたビタミンDはそのままでは働くことができません。肝臓と腎臓で「活性化」されてはじめて効果を発揮します。 カルシウム摂取不足やビタミンD不足になると、骨から溶け出すカルシウムの増加などにより、カルシウム蓄積が減少して骨が弱くなり、骨折の危険性も増します。骨粗鬆症の原因のひとつとも考えられています。最近では、ビタミンDは筋肉にも作用することによって高齢者の転倒予防にも役立つことが報告されています。また、妊婦さんにおけるビタミンD不足は赤ちゃんの骨の発育に影響を与え、ビタミンD不足の妊婦さんから 生まれた赤ちゃんの将来の骨量が低くなることが報告されています。小児期においても、母乳栄養の赤ちゃんやアレルギーなどで食事制限をしている子どもはビタミンD不足になりやすいと言われています。では、ビタミンDは一日どのくらい摂取しなければならないのでしょうか?「日本人の食事摂取基準(2005 年度版)」によると、年齢にもよりますが、1日4 〜5 μgが目安量となっています。また妊娠中や授乳中の女性はこの1.5 倍が勧められています。ただし、カルシウム代謝の面から調査した場合、少なくとも中高年女性の半数 近くがビタミンD不足であることが報告されています。これらの点を踏まえて、骨粗鬆症の予防と治療に必要なビタミンDは一日あたり10 〜20 μg(400 〜800 国際単位)とされています(表2-2)。ビタミンDの摂取は、まず食事からが基本です。食品としてビタミンDを多く含むものは魚類ときのこ類です(表2-3)。これらのうちどれかが毎日の食事に含まれていれば、ビタミンD不足にはなりにくいと考えられます。しかしながら、実際はカルシウム代謝の点では食事から摂取するビタミンDだけでは不足気味です。やはり、日光による合成もうまく利用することが必要です。皮膚で作られたビタミンDはビタミンDの運び役(ビタミンD結合蛋白質)によってすぐに運ばれるため、消化管から吸収されるビタミンDよりもからだの中で使われやすいと考えられています。とはいっても日焼けをするほどの「日光浴」が必要なのではなく、日本が位置する緯度を考えると、両手の甲くらいの面積が15 分間日光にあたる程度、または日陰で30 分間くらい過ごす程度で、食品から平均的に摂取されるビタミンDとあわせて十分なビタミンDが供給されるものと思われます。介護の必要な高齢者や妊婦さん、授乳中の女性などでは屋外に出る時間をもうけることや、屋内においてもガラスを通さない日光にあたる時間をもうけることが望まれます。
■紫外線と皮膚
皮膚は表皮と真皮から出来ています。表皮は皮膚の最も外側にあり、角化細胞が90%以上を占めています。そのほかメラニン色素を作る色素細胞と免疫機能を司る細胞も表皮内にあります。真皮は膠原線維(コラーゲン)が主で皮膚の丈夫さを保ち、弾性線維は皮膚の張りを保ちます。 皮膚には紫外線から身を守る仕組みが備わっています。最も強力な光線防御は色素細胞が作るメラニン色素です。メラニンは紫外線、可視光線、赤外線を吸収して、DNAへのダメージを少なくします。人間の皮膚の色はさまざまです。それは黒褐色のメラニン色素のためで、メラニンが多いほど肌の色は黒くなり、紫外線に対して抵抗性があります。白人では紫外線を浴びても赤くなるだけで、あまり褐色になりません。日本人は赤くなるとその後数日して褐色になります。
また、肌の色が黒い方が紫外線に対して抵抗力があるからといって、むやみに日焼けすることは良くありません。地表にいる我々が浴びる紫外線のうち、UV-Bは量は少ないのですが、皮膚の細胞のDNAに傷をつけてしまいます。皮膚の細胞にはこのDNAの傷を切り取って正しいDNAに戻す仕組みが備わっています。しかし、DNAの傷害が度重なると、直し間違いが起こり、誤った遺伝情報(突然変異)が生じることがあり、それが皮膚がんの原因になると考えられています。 我々は子供のうちに大量の紫外線を浴びていると考えられます。その影響は何十年もたってから現れてきます。子供のうちから紫外線を浴びすぎないよう、帽子、衣類、日焼け止めなどによる紫外線防御を心掛けることが大切です。紫外線の皮膚への影響は、太陽にあたってすぐにみられる急性傷害と、長年にわたってあたり続けて現れる慢性傷害に分けて考えることが出来ます。
紫外線で皮膚に炎症が起こり、真っ赤で痛い日焼け(サンバーン)として現れます。日光にあたって数時間後から赤くひりひりとした炎症が起こり、8時間から24 時間でピークとなり、2、3日で消えて行きますが、あたりすぎたときは水ぶくれとなって皮がむけます。海水浴などで日焼けをしすぎたと思ったら、なるべく早く冷水タオルなどで冷やすと多少軽減されます。サンタンは日光にあたって数日してから現れ、数週間から数ヵ月続きます。紫外線で色素細胞が刺激され、メラニンをたくさん作るために起こります。 紫外線で皮膚に炎症が起こると、それがきっかけとなって口の周りの単純ヘルペスが再発することが往々にしてあります。また、ふつうの人なら何でもないような日光ばく露で何らかの皮膚症状を生じる場合を光線過敏症と総称しますが、これにはたくさんの原因があります。また、ある種の薬の内服、外用後に日光にあたるとその場所に一致して赤く腫れあがることがあります。このように、いつもよりひどい症状(水ぶくれ、他の人と比べて著しくひどい日焼け、皮膚が腫れあがる、など)がみられたら、皮膚科医の診察をうけるようにして下さい。
長年日光を浴び続けていると、皮膚のシミやしわ、時には良性、悪性の腫瘍が現れてきます。お年寄りの顔や手の甲にみられるこれらの変化は、一般に加齢による老化と思われがちですが、実は紫外線による慢性傷害の結果であり、光老化は加齢による自然の老化とは異なり、適切な紫外線防御対策により防ぐことができるものです。 紫外線に関連してできる皮膚の腫瘍には良性のもの(脂漏性角化症)と悪性のもの(皮膚がん)があります。UV-Bのばく露と関連することが知られている皮膚がんとしては、前がん症である日光角化症と有棘細胞がんがあります。日光角化症の段階で治療すれば生命に関わることはありませんが、治療しないとより悪性化し、転移すれば生命に関わります。
日本は韓国やタイと並んで、世界で最も皮膚がんの少ない国です。皮膚がんの最も多いオーストラリアやニュージランドと比べて罹患率ではおよそ100 分の1、死亡率でも40 分の1から20 分の1です。 わが国における皮膚がん罹患率の年次推移を図2-4に示しました。全国推計値(年令調整罹患率)でみると、年間人口10万人あたり3〜5人で、男女とも増加傾向が見られます。しかし、皮膚がんの罹患(IARC)、死亡率(厚生労働省、人口動態統計)とも、紫外線の強い南に行くほど高くなるといった傾向は認められません。
■メラニン
太陽に肌をさらしていると、日焼けして赤くなった皮膚がだんだん褐色に変わっていきますが、これは色素細胞が新しいメラニンを作ったためです。紫外線があたると、数日後から色素細胞はメラニンをどんどん作りだして、まわりの角化細胞にも分配します。色素細胞からメラニンをもらった周りの角化細胞が、メラニンを基底細胞の核の上にちょうど帽子をかぶせたようにのせ、基底細胞の核にある大切な遺伝子が紫外線で傷を負わないように守ります。このようにメラニンは、太陽光のなかにある有害な紫外線を吸収したり散乱させたりして、皮膚への害をくいとめようとしているのです。