野球における周辺視野と利き目
利き眼とスポーツ、野球のこと
スポーツと眼の関係がスポーツニッポン新聞で掲載されていました。・・・・・
■ 2011年(平成23年)1月5日(水曜日)
スポーツニッポン掲載
「周辺視野」拡大で手に入れた」安定感」
久保の進化論
~いま明かす14勝の秘密
野球界では耳慣れない言葉でしょうか。「周辺視野」。おそらく、サッカーなどに興味のある方はピンとくるのではないでしょうか。僕も数年前に初めてこのフレーズを聞いた時は、全く意味が分りませんでした。
野球経験のある方ならよくお分かりだと思いますが、ピッチャーは一般的「キャッチャーのミットだけを見て投げなさい」と指導されるのではないでしょうか。僕自身も、そのように教わりました。でも、いま僕が実際にマウンドでそれを行っているといえば、違います。
キャッチャーミットだけ見て、ピッチングするとします。「目の見え方」が日によって変わる以上、キャッチャーミット一点だけを見うめていれば、その日の状態によって距離感に差が出てきてしまうのです。それでは、コンスタントにパフォーマンスを発揮することはできない。つまり自分の体調、もっと言えば調子の良い、悪いでピッチングの結果も変わってしまいます。それでは1年を通して先発を務めることは、どうしても厳しくなる。そこで取り入れたのが「周辺視野」です。ムンドにいる自分を想像して下さい。次にキャッチャーミットを見ます。そこからさらに視野を広げて、バーッターまでをとらえてください。それができるようになれば、次は審判も視野にいれます。それを1つの全体像として認識することができれば、自分の中で距離感をほぼ一定に保てます。それが野球における「周辺視野」です。
距離感を一定に
日常生活に置きかえて「周辺視野」を考えてみることにします。一番分りやすい例えば、車の運転でしょう。車の免許を取ったばかりの頃というのは、目の前の信号や一台前の車を見るのに精いっぱいで、すごく視野が狭いと思います。
それが運転に慣れてくると、1台前だけでなく、数台前の車やずいぶんと前にある信号、犬の散歩、歩行者の服の色など様々な情報が入ってくるようになりますよね。それは慣れもありますが、視野が広がっているということです。
より多くの情報
車に乗りたてで緊張しているのは、野球で緊張している状態にも当てはまると思います。投手の視野が広がれば、打者の細かいしぐさなどからでも、いろんな情報を手に入れることができます。僕が「周辺視野」にこだわるのはそのためです。<阪神タイガース投手>
近年、利き手、利きあ足、利き耳など、身体の「利き」について話題になることが多い。右半球、左半球の機能に関係した「利き脳」という言葉もある。私たちには両眼視しているので、日頃、気づかないが眼にの利きがある。
人は両眼で目標を見ているが、2つの眼が離れたぶんだけ網膜には少しだけ異なる映像が映る。脳はこれを1つに統合し立体視している。このとき、脳では左右どちらかの眼から入る映像を優先し、片方の眼からの映像を抑制している。この選択は無意識のうちにおこなわれている。映像を優先するほうの眼を利き眼という。利き眼は優位眼、指導眼、マスターアイなどといわれることもある。また、利き眼には機能性の利き眼と感覚性の利き眼というわけかたがあるが、機能性をさすのが一般的である。
利き眼の判定法にはいくつかあるが、おもに使われるのは次のようなものである。
①指差法(ローゼンバッハ法)
両眼を開いて目標を見ながら腕を伸ばし、指先でその目標を指す。そのまま指は動かさないで左右の眼を交互に閉じる。左眼を閉じていても指は目標ぁらずれないが、右眼を閉じる指先が目標から離れる場合は「利き眼は右眼」、逆に左眼を閉じると指先が離れるが、右眼を閉じてもずれない場合は「利き眼は左眼」である。
あるいは、親指とひとさし指で作った輪の中に目標を入れて交互に眼を閉じてもよい。
②ホールテスト法
眼の大きさほどの穴を開けた紙を、腕を伸ばして顔の正面に持たせる。この穴を通して、検査者の顔をみさせる。検査者から見て、右の眼が見えれば、利き眼は右、左が見えれば左が利き眼である。指差法で説明しても理解できあに子どもの場合にはホールテストが便利である。ただ、子どもの場合、穴を大きくしすぎると両眼が見えて判定できないので注意が必要である。このほかに、「ビンの中をのぞく眼は」、「望遠鏡を見る眼は」といった使用する眼から利き眼を決めようというものである。
私たちの両眼の視線は目標の一点で合っているわけではない。たとえばホールテストのとき利き眼を閉じてみると、非利き眼の視線がどれくらい目標からずれているかがわかる。このように利き眼は立体視するために優先する眼ということになるが、どちらが利き眼になるかは成長の過程でしだいに固定していくようである。
図23は右利きの眼の年齢による変化である。
これによれば、10歳ころまでは利き眼が右の子どもは30~40%で、10歳をすぎたころから右の割合が増え、成人に達するとほぼ60%ぐらいが右利きに眼になっている。成人伊丹市達するまでは女性のほうが右が多く、成人に達したのちは男性のほうに右が多いという性差がある。利き眼は左右のどちらかになるのではなく、あるとき右が利き眼になり、あるときは左になるというように、利き眼が一定しない交利眼と呼ばれるものもあるという。
①野球における左利きの有利性
テニスや卓球などでは、一般的に左利きは有利とされている。もともと左利きは少ないので対戦経験が少ないうえに、右利きの選手とはボールの回転やコースが逆になるので、左利きの選手を苦手とする人は多い。
スポーツの中で左利きの有利性がはっきりしているのは野球である。次のような利点があげられる。
左打者
・一塁ベースに近いうえに、振り切った姿勢でスタートできる、約2歩分速いという。
・右投手のボールを見きわめやすい。右投手は多いので有利である。
・二盗するランナーが左打者の陰になるので、捕手はスタート見にくい。
・ランナーをすすめることを考えると、右打者が右方向へ流し打ちするより、左打者は引っ張ればいいので打ちやすい。
左投手
・一塁へ牽制しやすい。
・右打者には膝元に食い込んでくる左投手のインコースの球を打つのは難しい。
・打者は全般的に左投手には不慣れ。
守備
・逆に、守備では左利きポジションが限られた不利である。
・内野守備では左利きの選手は二、三盗を許しやすい。左利きの捕手はほとんどいない。
このように見ると、打者としては左打ちが断然有利であることがわかる。実際に、プロ野球の1987年度の打率は左打者が0.278、右打者が0.245で、このことを裏づけている。しかし、左投げだとポジションが限定されるので不利である。したがって理想的なのは、右投げ左打ちの選手ということになる。プロ野球でも、巨人の篠塚選手をはじめとして、右投げ左打ちの選手にすぐれた選手が多い。